※ご注意※
この小話は原作ベースのイカガク風味となっております。
そういうのはカケラたりとも許せん、という方は
ブラウザのバックでお戻りになった方がお互いのためかと存じます。
むしろOKよ、という方はそのまま下へお進み下さいませ。
…なお、あくまで「風味」です。期待はしちゃいけませんよ?

 

 

 


 花の絨毯。
 そう言ったのは、誰だったか。
「まさしく、だな」
 むせ返るほどの香り、色の洪水。
 自分を取り巻くその景色に、イカサマは思い出したように呟いた。
 今や皆が認めるリーダーとなったガンバの冒険者一周年記念と、紆余曲折を経て結ばれたシジンとナギサの新婚旅行を兼ねた旅。その目的地、イタリーのベトララは、今、一面見事な花畑だった。
 ひときわ鮮やかに花の咲き乱れる一角で、どっと笑い声が起こる。
 見れば、シジンとナギサが引っ張り出され、皆から冷やかしの言葉を浴びせられている。
 新婚旅行、とは言うものの、騒ぎ好きの船乗り連中が一緒では、結局は披露宴の馬鹿騒ぎの続きとなるのだ。困ったように瞳を見交わしながらも嬉しそうな二人に、イカサマもまた一声野次を飛ばすと、もう一人の主役へと目を転じた。
 ガンバを取り囲む一団もまた、大いに盛り上がっていた。一年前の再戦とばかりに、ガンバとヨイショが相撲を取っている。あの時は確か引き分けだった。今回も膠着状態に陥っている二人にそれぞれ声援が飛ぶ。引き分け、の声が上がろうとした瞬間、ガンバの体が宙に浮いた。
「まだまだ負けるつもりはねえぜ」
 ヨイショは笑って豪快に酒をあおった。投げ飛ばされたガンバは、ちくしょう、と叫ぶと、負けじと酒瓶を手に取った。どうやら今度は飲み比べらしい。
 しかしこれはさすがにガンバに分が悪いだろう、とイカサマは心中で苦笑する。
 他に何か面白い肴はないものかと軽く巡らせた視界の端に、宴の輪から一人離れる影を認め、イカサマもその場を離れ、影を追った。
「よう、ガクシャ。何こんなとこで一人寂しく飲んでんだ」
 かけられた声にガクシャは振り向き、
「なに、静かに花を愛でるのもなかなか良いものでな」
酒のせいか、あるいは花の香りに酔ったのか、いつも厳めしい顔を綻ばせて応えた。
 それを意外に思うと同時に、そういえば、あれはこいつの台詞だったと得心する。
 そのイカサマの口元にかすかに浮かんだ笑みを揶揄ととったか、ガクシャは片眉を上げ、ことさら皮肉めいた口調で訊き返した。
「君こそ戻らないのかね。わざわざわたしに付き合ってくれなくとも構わないのだが」
「おれは、」
 イカサマはガクシャの隣に腰を下ろし、そのままごろりと横になった。片腕で頭を支え、顔をガクシャへ向ける。
「そうだな、…ま、おれはおれの花を愛でるさ」
 ――この、花の絨毯の中。
 ふ、と視線が絡んで、離れた。先に逸らしたのは、ガクシャだった。前方に向き直って杯を傾けるその横顔を眺めながら、イカサマは思う。
 ――この男との間には、どんな目が出るのだろう。
 どうやら、面白い賭けになりそうだ。
 頭の隅で、今はもう、砕けてないはずのサイコロの転がる音が聞こえた。 

 

 

 

 


注意書きつけるほどの代物でもないんですけど、なんとなく後ろめたさが…。
花のイタリー新婚旅行編(笑)…新婚なのはシジンとナギサですよ、ええ。
後半のガクシャとイカサマが書きたかったのです。
ガクシャ先生は高嶺の花なのよ〜。イダテンだって言ってるじゃないか!(←違うから)

でもこのイメージはあくまで原作ガクシャだなあ。
『冒険者たち』では、主人公が留守の間に大活躍、おいしいとこ取りの二人。
最初はヨイショとガクシャ、イカサマとイダテンのコンビで登場してきたはずが、やたらとこの二人が絡む絡む。
イカサマの方が面白がってちょっかい出してる感じだけど、ガクシャも結構大人気なかったり(笑)。
『カワウソ〜』で、話には弱いんだ、というイカサマに、ガクシャが
「いや、いいことだ。弱いところなどないと思っていたんでな」
というのがもう!ああ、そういうイメージを抱いてたのね〜、と妄想が膨らみます。
自分がいろいろ考えるタイプなだけに、イカサマみたいなタイプは、
常に飄々として恐怖とか不安とかとは無縁に見えたんだろうなあ。
前作であれだけ対立してたのが、こういうことを言える位になったのね、と感慨もひとしお。
ガンバも「あの二人がいれば大丈夫」みたいなこと言って、なんだか最強コンビと化してるし。

イカガク同志求む!