「五王戦国志」/井上祐美子(中公文庫)
かつては兄とも慕った男に一族を滅ぼされた耿淑夜(こう・しゅくや)は、
さらには主君までも弑し〈衛〉国の公位を簒奪したその仇・耿無影(こう・むえい)の暗殺を企てるも失敗、
逃亡の途で、夜光眼を持つ戎族・赫羅旋(かく・らせん)に拾われた。
天命とも言えるこの出会いが、やがて中原の歴史を大きく動かすこととなる。
三百年の長きに渡り、中原の国々を統べてきた王朝〈魁〉。しかしその権威はすでに形骸化し、
頂点にあるはずの王にはもはや何の力もなく、実権を握る太宰や他の強国に利用されるだけの存在となっていた。
中原の覇権に野心を燃やす大国〈征〉、国主の座に就いた無影のもと、版図の拡大をはかる〈衛〉。
〈魁〉の血縁国として、王朝の秩序を回復すべく対抗する〈奎〉、
無頼を率い戦に加わる羅旋、そして無影の野望を阻むために戦うことを決意した淑夜。
それぞれの思惑を孕み、戦乱の時代が幕を開けた。
国々の興亡の中で、さまざまな出会いや戦いを経て、淑夜は単なる復仇を超え、新たな「国のかたち」を目指すようになる――
淑夜と無影、二人の確執を軸に、ひとつの時代の終焉と、新たな時代の始まりを描く、古代中国風架空歴史物語。
新書版では中央公論社C・NOVELS(1巻)、C・NOVELSファンタジア(3巻〜。なお2巻は両バージョンあるようです)
から出ていますが、残念ながら絶版。イラストやあとがきも楽しみたい方は、図書館や古本屋で探してみてください。
文庫版は最終巻の刊行が2004年1月なので手に入りやすいと思います。ともに全8巻。
(なお、文庫版には8巻に短編の外伝が収録されています)