BALANCE GAME


「シーザーはさァ」
 ひとつのシーツにくるまったまま、胸元に緩く抱きついていたJOJOが顔を上げた。
 普段は自分より高い位置にある顔が、そうして見下ろすと年相応のあどけなさが覗いて、思わず緩みそうになる頬を抑える。
「なんだ」
「おれはシーザー見てるとムラッとして、抱きてえ、って思うけど、…シーザーはそうならねえの?」
「……抱いてほしいのか?」
「いや! いやいやそうじゃあねえけど!」
 女の子にするように、優しく腰に腕を回して引き寄せてやると、JOJOは慌てて身を引いた。その拒否っぷりはさすがに失礼じゃあないのかと軽く目を眇めると、首をすくめ、バツが悪そうに続けた。
「いやさ、おれは当然のよーに抱く方しか考えなかったけどよ、シーザーだって男なんだし、やっぱり抱かれるより抱く方がいいのかなあとか思って」
 いまさらのような気もするが、こいつなりにこちらを気遣う余裕も少しは出てきたというところか。ふむ、と唸って正直なところを返す。
「まあ、抱きたいと思ったことは、ないな」
 おれの答えに、少しばかり探るような視線を向けたJOJOは、じゃあ、と手をついて身を起こす。ベッドがギシ、とかすかに軋んだ音を立てた。
「抱かれたい、って思う?」
 腕の檻に閉じ込めて見下ろしてくる目に、捕食者の獰猛さが浮かぶ。男らしく精悍に整った顔立ちに荒削りな色気が滲んでなかなか悪くない、が。
「……それも、違うな」
 少し首を傾げ、考えを巡らせて答えると、狼がとたんにしゅんと耳を垂れた犬になる。その様子に再び綻ぶ口元を、しかし今度は抑えることはしなかった。先ほどまで繋がっていた場所はまだ甘い痺れを残していて、おれの口をいつもより素直に動かした。
「抱かれてやりたいと思っちまったんだよ」
 目を見開いたJOJOの顔が、見る間に茹で上がる。しかし赤い顔はそのままに、JOJOは眉を下げ、口をへの字にひん曲げて尖らせた。
「なんだその顔は」
「……おればっかりがっついて、甘やかされてるみてえ」
「拗ねるなよ」
 ふ、と苦笑が漏れる。全く、がさつで情緒に欠けるかと思えば、意外なほど繊細に機微を読み取る奴だ。
 こいつが望むなら受け入れてやりたいと思った、確かに、それはまぎれもなくおれの意思ではあるが、JOJOが言うような衝動ではなかった。
 だがなJOJO。
 その敏いおまえが、気づかなかったか?
 さっきの答えが過去形だったことに。
 おまえの言葉を借りるなら、おれだって、おまえにムラッとこないわけじゃあないんだぜ。
 でもそんなことを言えばこいつは調子に乗りやがるだろうから。
「なら、おれが抱いてくれってねだっちまうくらい、いい男になれよ、ジョセフ?」
 誘う言葉にほんの少し本音を滲ませて、おれは今夜ももう一度、この狼犬に抱かれてやることにした。 

 

 


ピロートークっぽいジョセシー
たぶん、ジョセフが「抱かれたい」と思ってたならこのシーザーは抱いてやることもできただろうなとは思うけど、
いかんせんジョセフがそういう思考に走らないので揺るぎなくジョセシーですw

シーザーは女の子に対しても、自分が「抱きたい」というより「抱いてあげたい」という思考な気がする

 

2013/09/21