●アトスとラウルとミレディーとモードントのこと。 ミレディーの名前が出たところで、ついでに語ってしまいましょう。 モードントは本当にウィンター弟の子だったのか。 実はアトスの子だった方がドラマ的には面白いのですが、年齢的にちょっと計算が合わないんですよね…。登場時23歳、20年前の「三銃士」編の時には3歳。 アトスが銃士隊に入って5、6年くらいと考えると。もっとも時間軸も結構いいかげんなところがあるので (2巻のラストを読む限り、銃士隊を去った順番はポルトス→アラミス→アトスなのに、3巻ではアトスが最初になってるし)アテにはなりませんが、やっぱりアトスがミレディーと別れて5〜6年は経ってるでしょうし。あり得てギリギリ4年?あとはモードントの出生日をごまかしてたとか。ミレディーなら財産乗っ取りのためにそれくらいやりそうだ。 ただ、真偽の程はわからないにしても、アトス自身は「もしかしたら」という疑念がずっとあったんでしょうね。 ダルタニャンがその存在をすっかり忘れていた「ミレディーの息子」のことを、アトスは20年間考えていた、というのはそういうことなのでしょう。(ダルタニャンが「忘れてた」と言った時のアトスの表情もポイントです) 関係者の中で、彼一人だけがモードントをかばっていたことに対しても説明がつきます。 「君はあの男に殺されたいのかも知れんが…」と言ったのはダルタニャンでしたが、実際そういう気持ちもいくらかはあったのかもしれません。 けれど結局、アトスが自らの手でモードントを殺す結果となりました。この時のアトスの台詞、 「息子がいたんでね、死にたくなかったのさ」 …これは、真実の息子はラウルだけだという自分自身への宣言であり、彼の、「幻の息子」モードントへの訣別だったとも取ることができます。 しかし、それでもやはりこのことは、ずっと心のどこかに引っかかっていたのだと思います。 第3部において、ラウルが自ら死地に赴くのを、アトスがどこか諦めた風で受け入れたのは、第4巻で「(ラウルが死ぬようなことがあったら)ぼくはその不幸を一種のつぐないだと考える」と言っていた、その償いの時がとうとう来たのだという意識があったからなのかもしれません。 恋を裏切られ、相手の女とその息子を手にかけたアトスにとって、最愛の息子が、同じく恋の痛手から、ただしこちらは相手ではなく自身を死に追いやることとなったこの結末は、皮肉とも言える、しかし、だからこそ厳粛に受け止めるべき報いとして映ったのではないでしょうか。 結局のところ、アトスにはミレディーがらみの事件のことをずっと引きずっていて欲しいな、ということなんですが。 |