ロシア版第一部の売りひとつは歌!
キャラの性格や状況を端的に表現していて、歌の場面だけでも楽しいのです。
ダルと三銃士がらみのものを中心にいくつか訳してみましたのでご紹介。
こちらもDVDの英語字幕を元にしております。意訳上等、間違ってたらごめんなさい。
展開に関してのネタバレも多少含まれます。
<トレヴィルのテーマ>
――銃士諸君!剣を抜け!
剣を抜け、気高き勇士よ 私が剣を授けたからには 剣士たちよ、悪党どもよ いざ再び剣を交えん 戦いに血を流すなど お前たちにはありふれたこと 私が剣を授けたからには 私が剣を授けたからには |
<我らガスコン> (ダルタニャン&トレヴィルバージョン)
ガスコーニュに「臆病者」の言葉はない ――さもなくば私は剣を返上しよう 我らガスコン、この世で至上の志向の持ち主 それはなによりも名声を好むもの 頬骨高く、身体は剛く 非の打ち所なき風貌 お信じあれ、長くはお待たせしないはず パリ中にダルタニャンの名が轟きわたるまで! ブルゴーニュ、ノルマンディー、シャンパーニュ、プロヴァンス 名を上げずしてパリには暮らせない ブルゴーニュ、ノルマンディー、シャンパーニュ、プロヴァンス ガスコン男児と生まれたからは |
続いてダルが隊長への謁見叶い、隊長が旧友の息子への厚情として王立道場への推薦状をくれるのですが、
ダルはちんたら勉強なんてしてられるかー!とガスコン魂に訴えかけます。
うーん暑苦しい(笑)。ここのダルが全編通して一番濃いと思う。演技も表情も。
設定なんだからしょうがないとわかっていても、「18歳です!」に吹く(笑)。 う そ だ !
ちなみに中の人の実年齢は当時29歳。
逸るダルに、隊長だって負けちゃいません。パリで名の知れたガスコンと言えばこのトレヴィルだ!とばかりに名乗りあげちゃう。
張り合うように盛り上がっていくデュエットが楽しい。
ガスコン魂に火のついた隊長はダルに剣をくれるのでした。
…が、まあこの後はお約束通り、ロシュフォール(と思しき人物)を見つけたダルは飛び出してっちゃうわけですね。
<護衛隊の歌>
ねぐらで飲もうと 礼拝堂でも 教会だろうと 居酒屋でも 枢機卿をお護りする者には 天上での居場所が約されている 我らはただの法の下僕 猊下は死後の楽園を 我らに約して下された |
決闘の現場を護衛隊に見つかり乱闘へ。
そんな中でかかるこの曲は護衛隊の皆さんの歌。曲調からしてコメディ要員だなあ。
見どころはアラミスの戦いぶりでしょう(笑)!ヒドイことやりつつしれっとしてるのがたまらない。
原作だったらもっとちゃんと戦ってるけど、これはこれでステキすぎる。
ポルトスは力技かつおちゃめ。
アトスは右手使っちゃって痛い痛い。なんでそんな身動きとりづらそうな高いところ登るの!(笑)
でもアトスのピンチはちゃんとダルが助けてくれるのよ。
ダルはとにかく動き回る!って感じですね。元気。
原作の「決闘」とはだいぶ雰囲気が違うけど、それぞれ個性たっぷりに見せてくれます。
<アラミスのテーマ>
主は決闘を禁じれど 剣士の魂は我が天分 主よ、ご覧あれ いずれ時が流れれば 決闘も忘れ去られるだろう |
ダルが護衛隊長ジュサックを倒してほっと一息。背後から忍び寄る護衛士を肘鉄一発で沈めるアラミスが男前。
そしておもむろに始まるアラミスの言い訳ソング(笑)
ロクデナシどもを矯正してやってるんだからいいよね?とまあ言うことがふるってます。
そんな歌をバックに映る他の面々の様子がいい。
ちゃんと母秘伝の軟膏をアトスにあげるダル、いきなりおやつを食べ始めるこのまったり空気。
アトスの後ろ姿も痛そうだけど楽しそうでもあり。
ポルトスは茂みに何をしに行ってたんだー。
服やリボンの乱れを整えるのがお洒落さん。ポルトスは仕草や表情がとってもチャーミングです。
後半アトスとポルトスがコーラスに加わるところが好きだなあ。結局みんな喧嘩したいのね。
ダル抜きの3人が見せる息の合った仲良しぶりがまたいい。
「もういいよ、坊や」ってな感じであしらわれちゃったダルのショボーン(´・ω・`)顔、取り残された寂しげな姿がなんとも哀れを誘います。
3人ともわかってやってるのがイジワルだなあ(笑)
ポルトスは「ご婦人がたはこの声にまいっちまうんだ」とか言ってますw美声アラミス。
曲の終わりで二人でタイミング合わせるアラポル。こういう細かいとこがかわいいの。
このあと、ダルを仲間に迎え入れてあげるんですが、常に意思確認の主導権がアトスにあるのもポイント高し。
呼ばれて嬉しそうにかけよってくるダルがわんこのようなのです。
そしてここで合言葉。「ひとりはみんなのために、みんなはひとりのために!」
<銃士の歌>
ご婦人とワイン、それに剣がツイてりゃ人生はごきげん 古い鞍はなお軋み、古傷に風がしみる ご婦人とワイン、それに剣にツキがあれば人生はごきげん パリでは金が要る 「それが人生!」 ご婦人とワイン、それに剣がツイてりゃ人生はごきげん |
隊長に連れられ陛下に拝謁も済ませて、すっかり仲良しになったダルと三銃士が歌うのはゴキゲンな銃士の歌。
ぱーらっぱーらっぱー♪とノリのいいこの曲は実に耳に残ります。
馬でぐるぐる回ってみたり、顔を寄せ合って小声になってみたり、いちいち楽しそうでかわいい。
最後に朗々と歌い上げるアラミスに、煽るポルトス、もう結構!て感じで耳をふさいでみせるダル、
そしてアラミスの帽子をひょいっと下げて邪魔しちゃう意外なお茶目さを見せるアトス、
4人の関係性というか力関係というかが垣間見えるようです。
なおPART1のエンディングは徒歩バージョン。
ダルが長いマントをくるんと腕に巻きつけるのがかっこいい。仕草からもだいぶ田舎臭さが抜けました。
さりげなく(?)アトスの肩に手を廻すアラミスに萌v
大抵の作品でダルとアトスは仲良しですが、ロシア版はアラミスがアトスを尊重している感じが窺えるのが嬉しい。
馬に乗ってない分動きの自由度が高いのか、ダルの身振りがより歌に合わせて楽しいことになってます。
2回目の「メルシーボクー♪」のところが好き。
小さいうえにスタッフロールに隠れて見づらいのですが、「メルシーボクー」に合わせてダルがお辞儀して、
アトスと多分アラミスもお辞儀返してるんですよ。そのちょこん、てお辞儀がかわいらしいの。
こまごまと相槌を打ってくれるのはポルトス。
最後のアラミスいじりはもうお約束(笑)みんなわかって待ってるよね。
そっぽ向くダルとか、「やっちゃう?」って感じで視線を交わすアトスとポルトスとか、ギリギリまで我慢して笑い崩れるアラミスとか。
ほんっと楽しそうだなあ!!
以下はロシア語原詞。読みははだいたいこんな感じ、ってことで。
さあみんな歌えるようになるんだ!
Пора, пора порадуемся на
своем веку Опять скрепит потертое
седло (コーラス繰り返し) Нужны Парижу деньги , се ли
ви (コーラス繰り返し) Судьбе не раз
шепнем |
ツキさまより、ロシア語解説ご協力いただきまして、
「束の間の休息さえ〜」とした部分、「не по карману」は成句で「懐に合わない、高くて手が出ない」
という意味だそう。(「карману」は懐、ポケット)
分不相応で身につかない、とか性に合わない、といったところなのでしょうが、
なんだか金払いの悪いマザランにこき使われて縦横無尽に走り回る第2部のダルを彷彿とさせます。
「パリでは金が要る」のあとが、英語字幕で「(金よりも)勇敢な騎士がパリには必要」というふうに受け取っていたのですが、
原詞だと、「騎士ともなればもっと(金が)要る」、ということのようです。
だけど金があったって愛と実力がなきゃ騎士じゃないぜコンチクショー、と強がってる感じでしょうか。
いつも金に困って嘆いていた彼らを思うとらしいですね。
2010.11.14