山南が、倒れた。
 夏の盛りである。山南は普段あまり汗をかかない。試衛館の狭い道場で、むさ苦しい男どもが着物の前を盛大に開けっぴろげてだらだらと汗を流す中、ひとりさっぱりとした姿は、傍目には涼やかではあるのだが、実のところは、熱が逃げぬまま身体の内に籠ってしまうらしい。ついには暑気に負けてぶっ倒れる、というのが毎夏の恒例となっていた。
 弱みらしい弱みのない男の珍しい弱点とて、周囲は心配しながらも半分は面白がって、やれ心太を買いに走るやら水盥を用意するやら世話を焼く。
 今回も見舞いという名の見物が一通り過ぎ去り、客間を借りて寝かされた山南の側には、土方がひとり、団扇をゆるゆると動かしていた。
「毎度のことながら、情けないな」
 嘆息混じりに山南がこぼすのへ、
「たまのことだ、気にするな」
 めったに隙を見せないこの男の弱った姿を拝める貴重な機会を密かに愉しんでいるのは土方も同じだった。
 それにしても、日は傾きはじめたものの、昼間の陽射しに熱せられた空気は当分冷めそうもない。これではいくら扇いでやったところで熱風を送っているようなものだ。団扇を止め、額に乗せられた手拭いに手を伸ばせば、こちらもすっかり温まってしまっている。
「水も温いな。換えてくるか」
「ああ…」
 手拭いが除けられるのにつられて山南が気だるげに目を上げた。
 不意に向けられた、熱に潤んだその眼に、土方は鳩尾のあたりがどくりと脈打つのを感じた。
 切なげに寄せられた眉。火照った身体。苦しげに漏れる、熱い息。
 ――まるで、情事の最中だ。
 熱い塊が、下腹をも侵しはじめている。己の下で乱れる山南の姿態が、目の前に重なってくる――記憶と違うのは、その肌が濡れていないことだ。
「――汗、か」
 土方はぽそりと呟くと、常より緩くくつろげられた山南の襟元に手を差し入れた。
 ぼうっと土方の動きを追っていた山南も、素肌に手を這わされて、土方の欲を察したらしい。
「……やめろ土方、うっとうしい」
 身体を動かすのも億劫なのか、その代わりこの男にしてはいささか乱暴な口調で制したが、土方は意に介することなく、さらに深く手を進め胸元をまさぐった。
「俺は、病人ではなかったのか?」
「汗をかかないからこうなったのだ。汗をかけば治るのではないか?」
 眉をしかめ抗議してくる山南の耳元に口を寄せ、土方はまことしやかにのたまった。どこか愉しげににやりと唇をゆがめた土方の貌が、山南の視界の端に映った。
「お前、抱かれているときは汗濡れではないか」
「土方……ッ」
 かっと頬に血を上らせた山南の非難の声は、しかし、首筋を吸われ、胸の突起を捏ねられて、途中で上擦った。
 笑いを含んで耳元に口づけてやると、山南はふいと顔を背けた。機嫌を取るように耳朶を甘噛みし、首筋をねぶりながら、慣れた手つきで帯を解き、前をはだけさせる。胸を弄る手はそのままに、もう一方の突起を口に含んだ。舌で嬲り、強く吸う。
「……っ、あ」
 両方から与えられる異なる感触にに身の内から湧きあがる感覚を逃そうと、山南が敷布に指を食いこませた。下腹へ手を伸ばし、布越しに撫ぜてやれば、腰が浮き、敷布を掴む指にさらに力がこもる。その肌には、うっすらと汗が浮きはじめていた。
「やはり、感じると汗をかくのだな、山南」
「馬、鹿…ッ」
 してやったりと満足げな土方に、山南は罵倒を投げつけたが、その声音にももう情欲の色が滲んでいる。男としては肌理の細かい白い肌が、ほんのりと上気して汗に光る様は、記憶に描いた以上に扇情的で艶めかしく、からかってみせた土方も、その実それほどの余裕はなくなっていた。
 口を吸いながら、すでに主張している己のものを扱きあげる。自身のぬめりを絡ませた指を山南のまだ固い入口へ忍ばせると、絡めた舌がびくりと強張った。ぬめりを塗りこめるように入口をほぐし、つぷり、とわずかな抵抗を破って侵入する。指を増やし、広げるように動かしてやると、重ねた唇の間から、切なげな喘ぎが漏れた。山南の腕が耐えかねたように首に回されたのを合図に、土方は指を引き抜き、自身を山南の中へと埋めた。
 汗は、もうどちらのものともつかず、互いの身体を濡らしていた。
 

 

 


夏の土南妄想。
夏の陽射しの中でもほとんど汗をかかないけど、痛みには汗濡れになる山南さん(本文公式)。
快感とかの刺激でもきっと汗かいちゃうんだよ。えろい設定だな!

試衛館時代なら土方さんこれくらい軽いときがあってもてもいいかなw
これで山南さんが治ったかどうかは知りません(こら)

 

2012/07/22