初っ端から気になる展開、ゼル離反。 確かコミック版連載開始時点ではアニメより先行していたので、アニメでもゼルの離反があるのか!?と期待されてたのにね…。 ゼルはレゾと一番つながりの深いキャラであるだけに、オゼル(ひいてはレゾ)が彼だけを誘い出す、というのは自然かつ興味を引くいい展開です。ゼル自体の描き方も、2話でのレゾ(壷)と対峙した時の態度とか、あからさまに激昂したり取り乱したりしてなくて、(いや、原作でも沸点は意外に低いんだけどw)、アニメ版より原作っぽさが強くてかっこいいですね! 第1話、ガウリイも、対ズーマでちゃんとズーマの動きを逆に利用して反撃したりとか、ゼルに関する考察とか、いい感じに出番を押さえてます。
2、3、4話はヴェゼンディ編。デュグルド・グドゥザとの戦闘は、ゼルが抜けていることもあってアニメより緊迫感がちゃんとあります。アメリア本気で苦しそう…。リナの反撃も、「仲間をボコボコにしてくれちゃって」と一言フォローがあるだけで印象が違いますね。 そしてズーマと、さらにゼルガディスも一緒に登場。ゼルが「ガウリイを先に片付けろ」と指示してるのがいい!ゼルはガウリイにも一目置いててほしいんだ!(でも最初、フキダシの位置関係で、ゼルとズーマのセリフを逆だと思ってしまった) ゼル対リナ、ズーマ対ガウリイ。そしてひとりこの場を離れなければならないアメリア、救援に向かった先の惨状…アメリアはこのシリーズ結構辛い思いしてますね。原作アメリアだともっと精神的にタフな感じはしますが。 壷を携えリナに迫るゼル。リナピンチ!――と思いきや、壷はリナの手に。離反し、ズーマと手を組んだのは安全確実に壷を自分たちの手に入れるための芝居!ゼ〜ル〜!おいしい奴め! (しかし、ズーマがデーモンに街襲わせるのにゼルも加担したようなもんなんじゃ…) 迫るズーマに対し、レゾの力を借りようと壷に呼びかけ、逆に意識を壷に引き込まれるリナ。ここのリナえろいな(笑)髪がふわふわしてて可愛い。 一方身体のほうは…何か入ってるーー!
レゾの魂から滲み出る何か――早い話が魔王さんに蝕まれるリナ、そこへL様、足跡のみご登場。部下Sはけっとばされて退出させられたんですか(笑)
デーモンを必死で掃討するポコタの前に現れたのはザナッファーデュクリス!前情報でコミック版には出てくるという話は聞いていましたが。フォルムが前よりかっこよくなってます
一方壷から解放されたリナの前で、ズーマ=ラドックの正体判明。こちらのズーマは、例の事件の起こったヴェゼンディの街そのものに対しても愛憎半ばして壊したがっている感じです リナが壷を通して見た彼の過去では、原作やアニメとは違い、奥さんだけでなく息子も一緒に殺されてしまっていて、もう守るべきもの、愛するべきもののない彼は、リナとこの街とともに自分自身も終わらせるつもりだったのでしょうか。 彼の狂気と恨みの理由を知って(…いや、ひどく飛躍した恨みではあるんですが)、それでも、ただ静かに「それはのめない」と返したリナは、7巻の「自分を殺そうとするガーヴたちのほうが正しいのかもしれないけど、おとなしく殺されてやれるほど悟ってもいない」と言った彼女を思い起こさせました。自分の生き方が他人を傷つける可能性を自覚しつつ、自分を捨てようとはしない、いい意味での強いエゴ、とでも言いましょうか。
ところで、魂を移せるのは壷ひとつにつき一人、とアニメでも漫画でも言ってるわけですけど…じゃあリナがレゾ入りの壷に引きずり込まれたのはどういうことなんだ。さらに同じ壷でズーマの記憶にまで触れてるし、壷多機能すぎじゃない?
ゼロスの横槍はアニメとそう変わらず。レゾに身体を戻す方法を聞くことよりアメリアに折檻を受けることを選ぶゼル(笑)。最初の裏切りのあたりから、かなりゼルアメですね。この漫画版の男前なゼルと姫らしいアメリアはなかなかお似合いです。 二人を残し、一行はデュクリスの背に乗りタフォーラシアへ。
タフォーラシアの封印を解くためには、レゾが力をふるえるように身体が必要、その器は――ポコタの本体。 ポコタがレゾに身体を提供する決意を固めるくだりは、デュクリスの忠告などの要素もあり、アニメの感情的な描き方よりポコタの決意のほどが感じられて好きです
目覚めたレゾ。しかしかけられた労いの言葉とは裏腹に、砕かれるオゼルの腕。レゾ自身の予想以上に早かった「魔王」の覚醒!残る意志をふりしぼり、レゾが叫ぶ――「私を滅ぼしなさい!」
アニメだと、レゾ復活までにも(脚本の質的な意味でも、作品内の「レゾの意志」としても)なんだかんだでずるずる引き延ばしてて、さらに、レゾ復活→タフォーラシアの皆さん救済→魔王復活、の流れだったので、いざ魔王復活してレゾが「私を滅ぼしなさい」とか言い出しても、それまで随分悠長にしてたのに…と感じてしまったのですが、コミック版ではレゾ復活と同時に魔王復活となり、ちゃんと「まだ抑えていられるはずだったのに」という、レゾにとってもイレギュラーな事態であることが描かれていて、戦闘への突入がスムーズかつ緊迫感のあるものになっています。 ゼロスの言い分も、アニメ版よりまだ納得できるかも。言ってることはあまり変わらないんですけど、魔王の描き方が、確かに、滅びがどうのというより「力が暴走してるだけ」という感じで、魔王としての意志とか自覚とかなさそうなので。アニメのはどう見ても自分の意志で世界滅ぼそうとしてるんだもの…
自我を失ってるとは言え、力は魔王。滅ぼす手は――重破斬を提言するゼロス、拒否るリナ。そんな中、魔王を抑えようと、自らの魂の封じられた壷を割って自分の身体に戻るポコタ。身体の中ではレゾもちゃんと魔王を抑えようと力をふりしぼってます。そうだよねそうでなきゃおかしいよね。 今なら通じると放った竜破斬はしかし瘴気に阻まれ届かず。 それを見ていたデュクリスは勝機をつくるべく、ガウリイを背に乗せて魔王に突っ込む!デュクリスGJ!白馬(違)に乗ったガウリイだ! ザナッファーと光の剣の戦士のユニットってのもすごいな。因縁的に燃える組み合わせだ。 あえて魔王の攻撃に身を晒し、魔王の身体を固定するデュクリス。その意図に応えるガウリイ。しかし中途半端に傷つけられた魔王はさらに瘴気を撒き散らします 力なく倒れ伏すデュクリス、しかし己の最期も想定のうち。そこにそびえる樹は――神聖樹。 5話の冒頭で、祭壇の設けられていた樹が伏線になってたんですね。なんでこんなところに神聖樹が…って、そういえばタフォーラシアはサイラーグの末裔ってことになってたんでしたね(…しかしガウリイにしてもそうだけど、100年やそこらで「末裔」ってのもなんだかなあ…) レボで最後に植えられた(あれはセイルーンに植えたんですよね?)まま何の伏線にもならず放置されたのより、ここで出てきたほうがまだ意味があっていいですけど。 デュクリス=ザナッファーの瘴気、そして魔王の瘴気までも吸収し成長する神聖樹。リナに術を完成させるため、ガウリイ、ゼロス、そして間一髪駆けつけたゼル、アメリア――全員が力を尽くしてリナを守る! 最後にガウリイに特別枠で見せ場があるのが嬉しいですね!瘴気を断ち切るガウリイとリナのカオスワーズの最後の一言がかぶり、そしてそのガウリイの陰から術を完成させたリナの姿が覗く――この画面構成、すごく好きです。(ガウリイの背中ごしにリナが登場するのがまた、「守りきった」という感じがしていい!) レゾに呼びかけるリナ、受け入れるレゾ。この一瞬の対峙もいいですね。まあ本来は呪文詠唱中及び発動まで、他のことしゃべったりして中断できないはずですけど(笑) レゾはポコタに自分の知識を分け与え…ってそんな器用なことできるんかい(笑)独白ながら最後の語りかけが、ゼルに対してという形で入っているのが、作者さんがレゾとゼルというキャラの背景を大事にしてくれているのが感じられます。 レゾが初めて見た光。「あなたたちだった」でちょっと涙ぐみましたよ。1パーセントの勝率を強気に信じる少女と、それにひきつけられた者。自分は光を求めるあまり魔王に取り込まれてしまったけれど、ゼルは自分のようにはならないと、けっこう前向きに生きられるようになった今のゼルを見ておじいちゃんは確信したのかもしれない。
エピローグ。 ポコタはデュクリスの身体で復活。周囲に自分として認識されないままずっと生きていくっていうのは確かに辛いか。…しかし外交とか王子(実質は王)が表に出なきゃならないような場はどうするんだ…後継ぎとかも…いっそ王制廃止?(にしたって、彼が「デュクリス」である以上はそんな決定下せるわけじゃないしなあ)
なぜレゾが甦ろうとしたのか。2話でのゼルとの対話で「やらなければならないことが現世に残っている」と言っていましたが。もう一度光を見たかったとか、魔王を完全に滅ぼしたかったとか、もろもろひっくるめてだったのでしょうが、コミック版のレゾはその辺はあまり描写されていないので、タフォーラシアの救済がメインっぽい感じは受けます。 コミック版ではタフォーラシアの疫病自体もレゾの仕組んだことだったのか、というところまでは踏み込んでいませんが、ポコタに「その知識があればおのずとすべてを知るでしょう」と言ってるのは、その辺のレゾの所業を示唆しているように思います。
そしてラスト。アニメも一応「二つの心」というのがテーマっぽくなってはいたんですが、それを体現させたかったらしいオゼルはなんだか中途半端だったし、セリフとかのはしばしに現れる表現の仕方もいまいちしっくりこなかったんですけれども、「何かを望む心の強さ」とまとめてラストに持ってきたのが、却ってきれいにおさまったと思います。さらにきちんと2部につなげてきたのが良かった。
決着のつけ方は、原作3巻と15巻のミックスな感じでしたが、レボで使っておきながらアニメでは放置されたデュクリス=ザナッファーや神聖樹のネタもうまく回収してまとめあげていたし、安易に重破斬制御より面白みがありました。 「魔王に竜破斬が通じる」理屈のネタはやっぱり15巻ルーク戦だけであってほしいというのはあるので、ラストは神滅斬でもよかったかな。ポコタとレゾで魔王抑えて、皆でリナを守りつつ、ガウリイが瘴気断ち切ったところで呪文完成、神滅斬構えたリナが「レゾ、滅びを」――なら流れはほとんど変わらないし(しかも術発動してからならしゃべってもおかしくない(笑))。まあこれも11巻とかぶってしまいますが。
全体的に見て、もともとのアニメの設定(特に壷関連)に無理があるというか詰めきれてないというかなのはともかく、アニメを見ていてひっかかったところ、ここにもうちょっとフォローがあれば納得できるのに、というところがきっちり補完されていて、かなり気持ちよく読むことができました。 コマ割りなどの画面構成や戦闘シーンの表現など、マンガ自体としてもレボの時より数段良くなっていて、レボのときはアニメの脚本を追おうとして却って作者さんのセンスを殺してしまっていたのかなとも思いました。 |