>「ギオ……ギオ=ガイア?」


昔から、すごく印象に残っている場面です。
ようやく終わったと思ったところに現れたハルシフォムの、異相の描写が。


光の剣を目にしたギオの、「聞いておらんぞ!そんな話は!」という叫び。
予想外の事態に遭遇した時によくある反射的なセリフと思わせておいて、
実は言葉通り「(ハルシフォムから)聞いていなかった」のだと、
ハルシフォムとギオたちとのつながりを示していたということがここでわかるわけですが。
破法封呪でリナの魔法が抑えられてる

ハルシフォム救出に光の剣を使う(=ハルシフォム、光の剣の存在を知る)
(リナ自身のモノローグの中でも光の剣の存在を知る者としてハルシフォムの名を挙げることで、
読者への情報提示はしてあるんですよね)

ギオの「聞いてねえよ!」
の流れが全部きっちりつながってるのがすごいなあ。

 

ハルシフォムにとって、『ルビア』はあくまでルビアのコピーだったのか、それとも一人の女性だったのか。

 >「けどね……ルビア……おまえに倒されるというのなら――それはしかたのないことなんだろうね……」

ハルシフォムの最期の言葉。
このセリフ、今まで、コピーの『ルビア』の中にいるはずの(ハルシフォムの記憶の中の、といってもいいかもしれない)、
オリジナルのルビアに対して向けられたものだと思って、
かつてのルビアの死についてハルシフォムに何らかの責任があったという意味で思い込んでいたんですが
(そんなの自分だけだったら恥ずかしい・汗)、
今回読み返してみて、目の前の『ルビア』に向けられたものとして捉えられることに気づきました。
その視点でハルシフォムの他のセリフも捉え直してみたら、いろいろしっくり来て、そして余計に切なくなった……

リナがセイグラムと対峙してるところへハルシフォムが追いついたシーン。
「もう二度とお前を失いたくないから」と言うハルシフォムを、
「あなたの追っているのは死んだ人の幻だ」と拒絶する『ルビア』。
彼女もまた、ハルシフォムが見、語りかけているのは自分ではなく、どこまでいっても、その中にいる
オリジナルのルビアだと思っている。
そんな『ルビア』の拒絶に対して、違う、とハルシフォムが見せた「とまどい」は、
ルビアに固執するあまりそれを理解できない狂気ゆえとも見えるんですが、
でも、ハルシフォムの言う「お前」が目の前の『ルビア』自身だったら。
ハルシフォムは、ルビアが死んでしまったことはちゃんと認識している感じがするんですよ。
コピーを作った始まりはルビアを取り戻すことだったのだろうし、今も全くの別人として見ているわけではないでしょうが、
それでも今の『ルビア』を、「他の誰でもない」彼女自身として愛して、
かつてルビアを失ったようにまた失いたくないと思っていて。
そう考えると、ハルシフォムが見せたのは、その想いが『ルビア』に届いていないことへのとまどいと悲しみであり、
最期のセリフは、自分のエゴで彼女を作り出してしまったこと、そして彼女をルビアの身代わりという呪縛から
解放できなかったことに対しての懺悔だったのかもしれない。
「ああ――そうだな」と髪を撫でられた時、はじめて『ルビア』もハルシフォムの想いに気づいたんじゃないでしょうか。

 

エピローグ。
 >「――で、だ、ここを出て、次はどこへ行く?」
ガウリイ、もう行き先をリナに委ねてます。
先に「ガウリイの転換点」ということを書いたのとつながってくるんですが、
ガウリイの方がリナについていく姿勢を見せているという点で、これ結構ポイントなんじゃないかなー。

 

最後に2巻の総括として。
最初に、この巻のガウリイは輝いていると書きましたが、改めてじっくり読んでみて、
実際そこはかなり計算して書かれたんだろうなと思いました。
1巻だと、ガウリイは(読者に代わっての説明され役という点も含めて)リナとのかけあいの相手役であって、
キャラ単体としては、合成獣だし敵から味方になるしラスボスと因縁持ちだしのゼルガディスの方が
インパクトあると思うんですよ。
でもシリーズ化するに当たって、前巻のラストから続くならリナとガウリイの二人旅、ということになるわけで、
この先準主役として張っていくために、ここでガウリイというキャラを強化しておこうという意図があったんじゃないでしょうか。
ロッドやランツにガウリイに興味を持たせることで、リナ以外の登場人物の視点によるガウリイの評価を見せたり、
ピーマン嫌いだの酒癖だの個人的嗜好を明らかにしたり、そういう面ではガウリイのための巻なんだな、と。
リナの相手役という面でも、デイミア邸地下やハルシフォム邸侵入前のシーンなんかで
1巻以上に二人の進展の可能性を読者にほのめかしつつ
(1巻のはむしろ「ヒーローとヒロイン」という関係性のパロディ的側面が強いと思う)、
対セイグラムでのガウリイの心情の変化を経てエピローグ、
1巻ラストの「リナがガウリイについて行く」から、リナ主体でそこにガウリイがついて行く、
という形に移行させているんじゃないかと思います。

神坂先生にとって長編2作目(デビュー後の実質1作目)として、ガウリイのことだけじゃなくて、
展開なんかも含めて、プロとして「計算して書く」ということを意識された巻だったんじゃないでしょうか。
2巻好きなファンの勝手な希望的観測ですが、新装版のあとがきを見ると、先生ご自身、2巻は気に入っているのかも。
(11巻でネタにしていたのは、そのあとに刊行される最終巻への布石でもあったのでしょうが)